研究内容

 熱工学研究室では燃焼に関する研究を行っており、燃焼工学や航空宇宙工学と関連したテーマについて研究を進めています。特に、可燃性予混合気体中(燃料と酸化剤が予め混合されている気体)を伝ぱするデトネーション波(爆轟波とも言います)については興味深く研究を進めています。デトネーション波は可燃性媒質中を伝ぱする燃焼波の一種であり、媒質の音速を超えて伝ぱします。デトネーション波が伝ぱした際の圧力および温度は急峻に上昇します。例えば、水素と酸素の予混合気を大気圧状態で管内に充填しておいたとします。次に、自動車の点火プラグなどを用いて予混合気を点火させますと、ある条件下(燃料と酸化剤の混合割合や初期温度、管内の形状、管の長さなどが関係しています)ではデトネーション波が発生します。デトネーション波の伝ぱ速度は約2.85km/s(時速で表すと10,260km/h)になります。また、デトネーション波背後の圧力は大気圧の約20倍、温度も3,000℃を超えます。このようなデトネーション波が発生すれば大変危険であり、周囲に甚大な被害をもたらす可能性もあります。したがって、安全工学上の観点からデトネーション波の発生や伝ぱのメカニズムについて調べることが重要になります。また、デトネーション波が発生した場合には、どのようにしてデトネーション波を減衰させ消炎させるのかと言った問題が重要になります。埼玉大学熱工学研究室では、超高速度カメラとシュリーレン光学系(媒質の密度変化を色の濃淡として表すことにより観察する方法)を駆使することによりデトネーション波の諸特性を明らかにするための研究を行っています。
(文責:小原 哲郎)


実験設備

 熱工学実験室があった実習工場棟は1964年(昭和39年)に建てられた建物であり老朽化が進んでいたことから、実習工場棟と建設工学科のコンクリート実験室を合築した建物が2013年に完成しました。これにより、熱工学実験室は新しい建物に移動しました。

旧・熱工学実験室:右からデトネーション駆動型衝撃波管(9m)、デトネーション駆動型衝撃風洞(15m)、衝撃波管(9m)が並ぶ

新・熱工学実験室:右からデトネーション駆動型ガス銃、矩形断面(25mm×30mm)デトネーション管、円断面(φ20mm)デトネーション管、矩形断面(100mm×100mm)衝撃波管、デトネーション駆動型衝撃波管が並ぶ(写真には写っていないが、矩形断面(50mm×50mm)縦型デトネーション管が撮影箇所付近にある)